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かつてネット小説書いてた人のリハビリ場所
サイト系のあれこれチェックのお時間です。

予想以上のWeb拍手ラッシュ(?)に、
ヤベ、催促されてる?
などと勘違いをしている所存でございます。

前回の記事でどこまで拍手お礼したか分からないですが、5月分から……

5月4日23時に2回
7日 5時
8日 19時
9日 5時
17日 7時
19日 1時、12時
27日 3時
28日 20時、21時

6月5日 2時、10時
15日 17時
17日 23時
18日 9時

本日確認分まででも5月から16回も、動きもなにもないサイトのどこから押されているのかさっぱりですが、ありがとうございます。

サイト運営をまともにやってた頃より多いです、マジで。

ということで、こういう作業をしたらついでにやるのがアレですが、ストックどれだけあるのかもうよくわかってないけどあまりないですね。
さて、どうしようか……

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  10★そう


 ――キーンコーンカーンコーン♪

 さて、眠いのをガマンして一時間目は終了し、休み時間。写真を撮りに来るかは謎だがとりあえず寝たフリをすべく机に伏せる。それからそう経たないうちに特徴的な足音、ほぼ真横で止まってからのシャッター音。

 ――ンゴゴゴゴ。

 椅子の引き方がおかしかったせいで変な音が床に響くがそこは気にせず撮影者をとっ捕まえる。
 これまで俺が全然気づいていなかっただけに、けっこう驚いた表情をした伊吹がそこにいた。

「お前、羽山と何やってんの?」
「名前で呼んでやれよゴミクズ」

 俺より身長低いくせに、強く睨み上げてくる目は人をひどく見下すような視線で、完全無防備だったスネを蹴飛ばしてきた。俺がひるんだ隙にくるりと向きを変えて教室から出て行って姿は見えなくなった……と思ったら、またドアのところまで戻ってきて一度こちらを撮影。
 なんなんだよ、ホントにアイツは! 何であんなのと羽山が繋がってんだよ、意味わかんねぇ。

 ――名前で呼んでやれよゴミクズ。

 伊吹に言われたことがふと蘇る。
 ……名前、で?
 誰を?
 羽山?
 えっと……、つばさ……さん?

「ほぁああああああ!!!」

 顔がどんどん熱を持つ。考えただけで恥ずかしくなってしまい、思わず教室でみんながいるというのに構わず叫んでいた。

「ちょ、青木?」
「なに、やっぱあの写真で弱み握られてたんだ」
「あの桜井さんだし……」
「ご愁傷さまだね」

 ちゃうわ。俺が想像以上にへちまでヘタレすぎると自ら嘆いているだけだ。
 この日は更に追い打ちを掛けるような事故も発生することになる。



 来月頭から開催される総体の練習が更に厳しくなってきて、当然甲子園行きが決まっている野球部も厳しい練習をしているんだけど、グラウンドがあれでこれでそれないつもの理由でまぁ、もう、以下略で。全国に向けた練習がこれでいいのか本当に。
 どちらも譲らず、時間ギリギリまで練習をしてたおかげで外はもう真っ暗なのに先輩たちはさっさと帰宅され、片づけは一年に押し付けられている形だ。
 こんなに暗くなるまで練習してたら、羽山に逢いに行けないじゃないか。今日はもうお父さん帰宅してて出てこれないだろうなぁ、と肩を落としながら自転車置き場へ……行く前にサッカーボールが一球落ちているのを見つけてしまった。
 おかしいな、誰かボール数え間違えたかな?
 気付かなかったフリをして帰りたかったところだが、これを明日の朝、先輩に見つかったら、一年全員の責任にされて、腕立て耐久か、ダッシュ耐久か、はたまた俺はドッジ耐久だろうか。それはお断りだ。
 カバンは自転車のカゴに放り込んで、ボールを部室へ持って行く。入り口ドアはもう鍵が閉めてあり、鍵も返却済み。ボール一個のためにわざわざ取りに行くのは面倒だし、たまに忘れ物を取りに来る部員もいるので、裏に回っていつも開けっぱなしの窓からボールを投げ込んだ。

 ――だめですってば……。

 ん? どこかから女子の声がしたような……。
 周りを見回しても真っ暗で、虫の鳴き声ぐらいしか聞こえない、静かな夜と言っていいほどだ。
 その中に、聞き取れないが男の低い囁き声が窓ごしに聞こえ、次に女の高い声が……。
 あ、これ、あかんやつや。
 隣の部室……こっちは野球部だこれ。いろいろヤバいなこれ。どうするこれ。
 ……そうだな、何かムカつくから、窓をわざと音を立てて閉めて、走って自転車置き場へ行って、すごい勢いで帰宅するのみ!
 しかし、途中から自転車なのに後ろをつけられている気がした。恐ろしくてただがむしゃらに漕ぎ続けたがそれは全然引き離すことができず、後ろを振り返ることもできないまま、いつものコンビニに到着。助けを求めるように駆け込む寸前、

「やっぱお前か、ゴミクズ盗み聞きヤロォ」

 この世のものとは思えないような恐ろしい声に、ゆっくりと振り返ると……コンビニの明かりにうっすらと照らされた、完全に髪も着衣も乱れたままの伊吹が自転車にまたがったままでそこにいて、すごい形相で俺を見下していた。
 まさに暗闇に浮かぶ般若の面!

「ひぃやぁあああああああ!!!!!」

 コンビニ前にも関わらず、俺はすごく甲高い声で情けない悲鳴を上げてしまった。
 伊吹はそのまま自転車で帰宅していく。けどさすがにその恰好で家に帰ったら何か言われるぞ。
 心拍数が上がったまま、時間的に品数少ない中から弁当を選んでレジへ。弁当がレンジで温められている間、大学生ぐらいの男性店員がクスクスと笑ってくる。

「さっきの、すごい悲鳴だったね。何見たの?」

 聞こえてたらしい。そういえばこの店員さんは俺が駆け込んだとき、入り口付近で掃除してたな。

「学校からずっと後ろつけられてて、怖くて振り返れなくて、とにかくコンビニに駆けこもうと思ったら声掛けられてびっくりしたというか……」
「で、誰だったの?」
「同じ学校の近所の女子でした」

 レンジから弁当を取り出してレジ袋に入れながら、「なにそれ」と笑われる。
 まぁ、それだけを聞けばその程度の反応だろうけど、事の始まりと仲の悪さと伊吹の恰好を見たら笑いごとではない。
 学校で、いかがわしいことをしてはならん。

「じゃ、気を付けて」

 店を出るとき、そう声を掛けてくれる店員さんに会釈をして、空いてる手はポケットの携帯を探す。
 たぶん、今日は逢えないだろうけど、一応電話してみよう。
 発信履歴からすぐ呼び出した番号に掛ける。もしかしたら食事中とか入浴中とかで出てくれないかもしれないけど……少し長めに鳴らすつもりで呼び出し音を聞いていると、そう経たないうちに羽山は出てくれた。

『もしもーし』

 いつもより遅いのに、別に機嫌が悪そうな声音ではなく、通常通りだったのでまず一安心。

「ごめん、今日遅くなって……さすがに無理、かな?」
『今、コンビニ?』
「ああ、そうだけど」
『お父さんお風呂長いからちょっとなら大丈夫だよ』

 やっぱお父様帰宅してんじゃん。
 でも大丈夫と言われて行かないとは言えないのでとりあえずアパートへ向かう。でも話した時間はほんの少しで、今日は黙って抱きしめたい気分だった。

「どうしたの?」
「……今日はいろいろ疲れた」
「授業ちゃんと受けた?」
「うん、でもよく分からなかった。テストも解けないはずだ」
「聞いてないより、聞いてるだけでちょっと違うよ」
「そうだね、よく分かった。あと、たぶんこれから総体まであまり会えないかもしれない」
「……うん、わかった。大丈夫だよ」

 羽山の方から離れようとするまで、包み込むように抱きしめているつもりだった。なのにふと、伊吹に言われたことを思い出してしまう。
 ――名前で呼んでやれ……。
 名前……、彼女の名前は羽山つばさ。
 有名なサッカーマンガのキャプテンと同じ名前だったという理由で中学に入学して割と早い段階で覚えていた名前。サッカーが得意そうな男かと思ったら、頑張り屋さんの女の子だった。

「……つばさ」
「ほぇ?」

 予期せず囁いてしまった羽山の名前。離れたのは俺の方。抱きしめていたのに羽山の肩を掴んで引き離していたけど肩はつかんだままの距離で見つめ合うことになる。

「いや、あの……」
「名前、知ってたんだ」
「当たり前だろうが!!」

 見当違いなことを言われて恥ずかしさはぶっ飛んだけど、助かったのかどうなのか、よく分からない。

「私も青木くんの名前知ってるよ」

 と羽山は恥ずかしそうに目を逸らすけど、表情は緩んでいて、俺には嬉しそうに映った。そして、自分の名を呼んでくれることを、どう呼んでくれるのか期待する。

「創くん」

 ただそれだけなのにじわじわと心に沁みて、顔の緩みが抑えきれない。

「正解!」
「やったー」

 もう、お互い照れ隠しに必死で、おかしなことばかり口走っていて、

「おおそうだ、あまり遅いとお父様が」
「そうだね、忘れてた」
「忘れとったんかい!」
「うっかりです!」

 うっかりすぎます!
 いつもよりぎこちなく別れの挨拶を済ませ、押さえきれない照れ笑いを浮かべながら帰路につく俺。
 羽山おとんが風呂上がる前にちゃんと戻れたかは謎のまま。そんなことが気にならなくなるほどとにかく舞い上がっていた。



 そのせいではなく、元々まともに勉強していなかったことが祟って、一学期期末考査、見事な赤点により居眠り時間がアディショナルタイムになって夏休みに帰ってきた! 要は見事に補習と追試が決まったのである。
 どうせ部活で毎日来るだろうけどさ……もう総体目前だけに先輩方の視線がいつもの倍以上に冷たかった。

「お前、一応補欠キーパーなんだから。ウチ、キーパーお前含めても二人しかいないんだから、出ることなくてもベンチ座れるって知ってた? 自覚ある?」
「た、大変申し訳ございません!!」


「補習、必ず受けますのでどうか、どうか部活割り当てになっていない時間でお願いしたいです」
「……ふざけてるね」
「そこを、そこをどうかぁぁ!! わたくし、サッカー部唯一の補欠キーパーだそうで、このクソ重要な時期に補習が決まってからというもの、先輩方の視線が冷たすぎてブリザード」
「自業自得だよ」
「……ですよね、分かってます。二学期以降はこのようなことがないよう、勉学に励む所存であります!! なので補習はどうか、どうか!!」
「ええい、うっさい!!」

 土下座、土下座の嵐。
 そのかいあって、補習が課題と追試になった教科、部活時間を潰すことなく補習と追試を受けれるようになった。各方面の先生方には大変ご迷惑をおかけしますが、ご理解いただき感謝いたします。
 が、羽山にも土下座だこれ。夏休み前半は部活と補習で潰れる。



「という訳でして……」

 羽山の表情がまさにグシャっと崩れた。

「部活はガマンしようと思ってたけど、補習、追試……」
「ハイ……」
「からの、八月は総体……甲子園と何が違うの?」
「根本が違うねそれ。伊吹の方が得意分野だから聞いてみるといい。一時間は語ってくれるだろう」
「試合、どこであるの?」
「今年は東北だって」
「……遠い。毎年違うの?」
「らしいよ」

 話がうまく脱線しつつあるので機嫌はもういいのかなーと油断してた。

「でも補習、追試だって、あれだけ言ったはずなのに……」
「以後、ホント気を付けるから」
「私、創くんのお母さんじゃないよぅ!!」



 楽しいはずの夏休み七月分は、部活と補習でガチガチ生活。どうにか追試で平均を上回り、無事任務終了。安心して総体会場へと乗り込んでいった。
 夏休み期間中ということもあり、試合は毎日開催される。テレビで見る高校野球の甲子園ほどの盛り上がりはない。観戦席は選手として選ばれなかった部員と保護者ぐらいのもの。吹奏楽部や応援団は野球部専属みたいなもんで、甲子園の盛り上がりに比べたら……静かなものだ。


「新山、もっと出ろ!」

「山野ぉー!!」

 普段の練習にはほぼ出てこない顧問がすごいリアクションしつつ声を張り上げている。
 相手ゴールに近づくと興奮してみんな声が大きくなる。
 シュートを外すとああー、と落胆の声。
 ピッチの外と中は次元が違う。外からは何とでも言えるけど、中は思い通りにいかない戦場。
 相手チームのフォワードが、ミッドフィルダーが我が校ゴールへ上がってくる。ディフェンダーがボールを取りに、パスを出させないように選手をマーク、ミッドフィルダーもゴール寄りに固まりつつある。
 ちょっと戻りすぎじゃないか? チャンスが来ても攻撃できない。
 チャンスは来なかった。そのまま守備はかわされ、攻め込まれ、キーパーが倒され、押し込まれたボールにゴールネットが揺れた。
 人がぐちゃぐちゃっとまみれたと思ったら、一瞬の出来事だった。
 相手選手が分散する中、主審とチームメイトがうずくまっている我が校の背番号1――加藤さんを囲む。
 あ、イヤな予感してきた。

「青木」
「……はい」

 万が一のために準備しろという合図だった。
 あんなのが突っ込んで来たらひとたまりもない。とにかくボールをゴールに入れさせないために、ボールばっかり見ていたらあっちからこっちから人が突撃してくるようなものだ。怪我しない方がおかしい。
 けっこう本格的に体を動かしていたのだが、キーパー加藤さんはどうにか復活、そのまま試合続行となったけど、俺は動きを止めることはなかった。
 21という番号を背負ってるから、他人事ではない。キーパーの代わりは俺しかいない。なんてチームだ。おかげで一足お先にベンチ入りできたわけだけど。

 俺の出番は結局ないまま、総体一回戦で敗退。県内トップクラスであっても、全国での一勝の壁は厚かった。


 ――試合、一回戦負け。俺は出れなかったけどいい経験できた。
『送信』


 帰りの新幹線。トイレに籠って携帯をいじくってた。思いのほか揺れる車内に手元が狂ってうまく文字を打てず、時間が掛かったわりには短い文章になってしまったが、羽山にメールを送信。
 なにやら戻っても野球部が甲子園行くまで部活がまともにできないとかで一週間練習時間短縮となった。休みにすると盆もあるから二週間も部活なしになるのでそれは回避する形である。しばらく試合ないからいいんじゃね? とも思うがそういう訳にもいかないようだ。

 試合会場から行き当たりばったり新幹線で帰郷、最寄り駅まで戻ってきた頃にはもうバスなんてない時間。でも安心してください、電車に乗り継ぐ際、父に連絡しておきました。たぶんどこかに……ああ、いたいた、目の前にウチの車。
 いくらもうバスがない時間とはいえ駅舎の真ん前に停車するとは。少しぐらい遠慮してズレとけよ。と思いながら助手席側後部座席のドアを開け、荷物を放り込む。

「おかえり創。残念だったな」
「ただいま。まぁでも、俺出てないし。次か、来年の試合はイヤでも出ることになりそうだけど」

 後部ドアを閉めて自分は助手席へ乗り込み、シートベルトを着用。父もベルトをして、車を発進させる。

「ご飯は?」
「うん、腹減った」
「ファミレスでも行くか」
「よし、ステーキ御前とシーザーサラダとハンバーグ!」
「……まぁ、今日はいいだろう」

 脳内はステーキでいっぱい、口の中で分泌される唾液量が増えた。じゅるる。
 駅近くの深夜まで営業しているファミレスで腹ごしらえ。やっぱり弁当以外のものはたまらんウマい!
 父さんは唐揚げを頼んだせいでビールが飲みたそうだったが、まだ運転して帰宅せねばならないのでガマンしている様子。ノンアルコールを追加で注文していた。

「次の土日、社員旅行で家にいないから」
「社員旅行? どこいくの?」
「箱根」
「ふーん。お土産なにがあるかわかんないとこだね」
「まぁ、何か買ってくる」
「伊吹んちの分もね」
「分かってるよ」

 伊吹との関係はどうであれ、桜井家には何かと世話になってるからな。こういう時のお土産ぐらいしかお返しができない。
 テーブル半分を埋めていた俺の注文の品は十五分も経たないうちに空にして、入店から三十分以内でお会計、コンビニで明日の朝食や菓子ジュース、父は缶ビールを購入し、帰宅。
 荷物はダイニングにほったらかしてまた明日どうにかするとして、さっさと風呂に入り、部屋は窓が閉めきってあったので真っ先に開ける。そして布団にばったり倒れる。
 ものすごい眠い。試合には出てないからこれは移動疲れか。
 でも寝る前に羽山にメールしとかないと、無事帰宅しました、と。
 それだけ打って送信。返信を待たず、眠りに落ちた。



 朝、時計は九時を過ぎたところを指している。思っていたより早くに目覚め、真っ先に確認したのは携帯。昨日、いろいろ書きそびれたことがあったのもあるし、何より送りっぱなしメールばかりだったから、ちゃんと返信の返信をせねばとも思って。それに今日、明日は部活が休み、あさってから四日ほど時間短縮での部活。ようやく羽山とデートらしいデートができる、いやむしろ初デートではないのか? 俺が部活休みの時ってテスト期間かだいたい雨だし、一緒にどこか行ったというよりコンビニで会った、アパート前で会話ぐらい。俺は部活、羽山も家で家事をしなければならないから、学校帰りにどこかで待ち合わせて一緒にぶらぶらとかなんてできないし。
 そうか、初めてになるのか……。今日、急だけど大丈夫だろうか? 今日がダメでもまだ明日があるし、土曜まで部活はあっても……。
 土曜? 日曜と社員旅行。そうだ、父さんいないんだ……。
 いないのか? じゃ、羽山泊まりに来ても大丈夫じゃん。そうそう、泊まりに……!!
 それ、ただごとじゃないよ!!
 ちょっと待って、ちょっと待って……。もしかしたら何も起きないかもしれないじゃないか。そんな訳あるか!
 いやいやいや、そこはどうでもいい、あとで考えろ。今日はデートだ!
 ということで、昨日の返信を兼ねてお誘いメールを送る。休みだから返事はのんびりかな、と思って一階に降りてほったらかしの洗濯を始めようかぐらいでメール受信音。思ったより早い、さすが主婦、休日ものんびりしてない。

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あけましておめでとうございます?

今年初ブログが平成最後の日でした。

拍手お礼……

2/1 17時
3/21 6時
4/2 7時
4/3 4時
4/14 10時
4/26 19時
4/28 16時
4/29 8時

ポチっとありがとうございます。
ここ最近多い……動けという催促?
でも、平成のうちにブログ書くきっかけになりました。


なんかよくわからんWebサイトを立ち上げ、おかしな文章や絵を晒していたら、色んな方々に突っつかれました(いい意味で
当時はとても楽しくて、PCにかぶりつく毎日でした。

XPのサポート終了からか、創作から徐々に離れ、某ゲームにのめり込んでからは一切手を付けず、今はそのゲームから離れたものの結局創作する意欲は湧かないまま今に至ります。
どうせホームページいじくるソフトもないし……
とはいっても、今のまま放置作品をそのままにしておくのもやっぱりイヤなので、書きたいことは書いて出したいとは思ってます。

令和になっても相変わらずでしょうが、まぁ、もそもそやっていければと思ってます。

出会った分だけ、自分からの拒絶、相手からの拒絶もありました。
数々のロスは自分によくない影響をもたらしました。
でも、その人たちがいてくれたからこそ、今の自分があるのだと、ありがちなセリフしか出てこないけど、
平成という時代に出会った皆様、ほんとうにありがとう。

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  9☆つばさ


 通学途中にある麺屋。梅雨時期でまだ寒くないか? 早いのではないか、と思うような「冷やし中華はじめました」というのぼりを見かけてから1ヵ月ぐらいは過ぎただろうか。
 雨の日数は徐々に減り、夏の訪れを告げるようアレが鳴いているのに気付いた。
 夏――セミ、始めました。
 外はまさしくカンカン照りで、上から太陽が照り付け、下はアスファルトが余熱でじっくりじわじわ……例えるなら両面焼きグリル。夏の野外はまさにそれであった。
 いつの間にか夏ですよ。お弁当腐る……。
 でも大丈夫、安心してください、学校はエアコン完備です!
 寒くもなく暑くもない程度の室温で勉強に快適な環境。遠方からの進学も安心な寮もあり、なかなかメニューが豊富でおいしいと評判の(まだ行ったことない)食堂もあり、さすが私立、至れり尽くせり。

「んー、ウチの学校にもエアコンあるよ」

 なに!? 県立高校にもエアコンあるだと!
 たまたま帰りが早かった青木くんに会い、コンビニの影でアイスを食べながら座り込んで話してるけど、汗だらだら。実は側に室外機があるから余計に暑かったりするんだけど、ちょうど道路から見えないところで夕方の時間帯で唯一日陰になる場所だからここにいる。

「それにしても暑いね。食べ終わる前に溶け始めたぁ」

 こぼさないよう、垂れるしずくを舐める。気温が高い時に棒アイスは失敗だ。次からやめよう。そして崩れ落ちる前に一気に咥えこんだところ、隣から視線を感じる。
 アイスを咥えたままそちらを向くと、何とも間抜けな顔をした青木くんが私を見ている。しまった、かわいくなかったかな。

「……エロい」

 どこが!! と全力のツッコミを入れたのだが、青木くんはごにょごにょと濁して教えてくれなかった。


  □□□


「そりゃつばさん、アレだ……」

 学校で友達との会話の中で話題にしてみたら、周りにいた三人全員に何とも言えない表情をされ、志乃ちゃんが重い口を開いた。

「え? やっぱ棒アイスなんて子供っぽかった? やっぱカップの方にしとけば良かったかなぁ」
「そこじゃない。何で子供っぽいにエロいが繋がるのよこの子は」

 あ、そうだね。あれれ?

「食べ方がこう……エロいのよ」
「何で、普通に食べてたもん」
「だからぁ……」
「なんて純粋なのこの子!」

 バカにされてるのかな、これは。

「もぅ、何か濁されるとすごいバカにされてるみたいでいやなんだけど、はっきり言ってよ!」
「ならはっきり言うわよ。しゃぶってるとこ想像したのよ、カレシ」
「……へ? しゃぶ……??」

 ここは女子しかいない花の楽園ではない。
 男子禁制のこの空間に、オブラートなど存在しなかったのだ。
 カプセルの薬の中身をぶちまけてしまったのか……。
 私は、知ってしまったのだ。そっちの話を……知らなさ過ぎたのだと痛感したのだ。

「今は純粋無垢なつばさんも、そのうちカレシにエロいことされるのね……」
「う、うわわーん!!」
「まぁ、覚悟はしとかないとね。つきあってたら避けては通れない、もうそういう歳なんだから」
「男の部屋に一人で踏み込むときはそれなりの覚悟で! ほいほい泊まりにいかないのよ?」
「あと、何があってもちゃんと避妊をしてもらうのよ」
「それから、男の前で長い棒状のものをしゃぶるように食べるのは不可。バナナなんてもってのほか! 襲われてもしらないからね」

 聞きたく、なかった……。
 だって青木くんはそういう素振りとか全然ないし、手繋いだりキスするぐらいでもまだ照れるぐらいの関係だし、ましてやまだ名前で呼び合うことさえもできてないほど純粋な……って思ってるのはもしかして私だけかな? だからお子様とか言われるのか……。

「だって、そんなこと、保健体育の教科書にもなかったし、性教育でも習ってないもん!」
「教えられてたまるか!!」

 二次性徴ばかやろう。

「だいたい、そんな情報どこから得てくるんだよぅ」
「……兄貴のエロ本?」
「微妙だよぅ!」

 理想的な女子高生の会話じゃないよぅ。


 少々のカルチャーショックを伴って、帰宅しまする。

「つばさ、ちょっといらっしゃい」

 途中で伊吹に捕まって、ファストフード店に連れ込まれた。
 体育会系な伊吹は、半袖のブラウスの袖をさらにまくって肩まで露出しそうな勢い。スカートもふつうのより短めな気がするけど、やっぱり露出をカバーするようにちゃんとスパッツがのぞいている。いつでもすぐ捕獲に走れる感じだ。それに捕まったのが私ね。
 伊吹はポテトと炭酸飲料を注文し、私はアイスティとデザート的なものを注文して、日差しの入る窓から離れた涼しい席についた。
 来いって言ってたくせに、なぜかポテトを黙々と食べ続ける伊吹。なぜかとてもこちらから話しかけれるようなオーラではなかった。その間に私もデザート的なパイをもそもそと食べる。外がパラパラとこぼれる、中身が飛び出すで少々苦戦を強いられてしまった。

「145……普通ね」
「一体何が?」
「本数よ、ポテトの」
「……数えてたの?」

 ほんと、変わった人だ。でもようやく会話ができそうだ。

「で、何か用事?」
「この前コンビニであたしの連絡先聞きたがってたでしょ?」
「うん、そうだけど……」
「たまたまつばさがいたから、交換しようかと思って。じゃないといつまでも面白い情報提供できないでしょ?」
「何をしようと思ってるのかちょっと予想つくよ」
「うふふ、学校での創の姿が見れるのよ、ありがたく思いなさい」

 いい友を持ったのか、地獄の始まりなのか……。彼女があの桜井伊吹だから、なんとも言えない。

「すでに激写いっぱいあるのよ」

 と、写真をどんどん見せてくるけど、全部居眠り写真だった。

「……授業受けてるのかな?」
「寝てるわよ、クラス違うから休み時間の度に見に行ってるけど、起きてる気配ないもの。写真撮られてるのにも全然気付いてないみたいだし」
「お説教だよぅ」
「部活の時間はすっごい頑張ってるんだけどね」

 と次の写真を見せてくるが、いろいろおかしい。

「……鬼ごっこでもしてるの?」
「いいえ、野球部員と戯れてるのよ」

 そういえば仲が悪いって聞いたような。
 携帯番号とメアド交換をすると、すぐに伊吹から大量の寝顔写真が送られてくる。
 んん、かわいいである。

「生で見たいでしょ?」
「んー、見たよ」

 はっ! とした時にはすでに遅し。伊吹はニヤっと何かをたくらんだような表情を浮かべる。

「ヤったの?」
「してないよぅ!!」

 今日はこっちのネタで持ち切りの日なのか? でも先日のコンビニの時みたいにダイレクトな名称を言ってこなくて助かった。

「でも寝顔見たことあるんだ、へぇ……未遂かしら?」
「もう何とでも言ってくだされ」
「緊張しすぎて使えなかったことにしとくわ」

 ……何が?
 あれは別に何にもなかったし、まだそういう関係でもなかった頃だったし、下手に言い訳した方が裏目に出たりするから、それはもう、今日十分思い知らされた感じがするのでもう黙ります。


「じゃ、また連絡するわ」

 いつものコンビニがある三叉路で、伊吹と別れた。
 別れた途端、ふと気付く。
 そういえば、今日は部活なかったのかな? まぁ、たまには休む用事もあるか。寄り道してたけど。


 帰宅からしばらくして、伊吹から件名も本文もない写真のみのメールが二十通ほど送られてきた。
 小さい頃の青木くんの写真から、中学に入る前までの頃……私の知らない彼。さすが幼馴染み殿、いいものを持ってらっしゃる……けど、私にとってはお宝写真すぎる、けど、当然のように伊吹が一緒に写ってるのよね……嫉妬しちゃう。
 青木くんたちより小さい子もたまに写っている。笑顔溢れるかわいい男の子と、なんとなく青木くんに似たはにかんだ笑顔の男の子……弟さん?


 そんなことがあっても、何も知らない青木くんは私に逢いに来る。

「授業ちゃんと聞いてる?」
「……提出物はちゃんと出してるよ」
「授業聞いてるか聞いてるんだけどなぁ」
「……どうしたの急に」

 私は携帯から居眠り写真を表示させて青木くんに見せる。

「内部告発がありまして」
「……誰か写真撮りに来てるって聞いたことはあったけど、あれ羽山だったの?」
「それはない」

 学校違うでしょ、このとんちんかんさん。私と同レベルだったか!!

「居眠りは関心態度にCつくって言ったじゃん」
「いや、俺もう大学とか専門とかには進学はしないので……」
「進学以前に留年だよ! どうせテストも点取れてないでしょ? もう一回一年生だよ!」
「……二回留年して羽山と同じ五年とか?」
「バカ言っちゃだめだよ!!」

 って怒ったら、すごい勢いで謝られたからたじろいでしまった。

「羽山、母さんかよ」
「うう、なんですとぅ!!」

 私にはよく分からない次元ではあるけど、ごく一般的なお母さんってそんなのなんだ……。

「でもま、以後気を付けます。ついでに寝たフリでもして撮影者捕まえよう」
「……殴るよ?」
「……伊吹かよ。全然接点なさそうなのにしれっと繋がってるよな」
「……青木くんのお宝写真いっぱいいただきました」
「ワイロか?」
「ううん、何かと伊吹も一緒に写ってる写真チョイスされてるあたり、嫌がらせだと思う」
「……アイツらしいな」
「確認しないの?」
「……気にはなるけどやめとく。弟写ってるだろ」

 やっぱり弟さんなんだ。お母さんと一緒に弟さんは出て行ったこと、青木くんは置いて行かれたこと、まだ引っかかってるんだ。
 伊吹が送ってきた写真の話はしなければよかったと後悔した。
 あと……私の前では伊吹のことを「桜井」って言うようにしてることにも気づいてしまった。幼馴染みだから、中学であんなことになるまではきっと名前で呼び合ってたはず、そう思えるほど、二人の、互いの呼び方が名前だと自然なのに、苗字だとよそよそしく聞こえるんだ。
 そうか……私はまだ、「羽山」なのね。毎日逢いたいだけじゃ飽き足らず、ワガママなすぎるね。
 鈍感なくせに、こういうことには気付くんだから……イヤだなぁ。


拍手[0回]

【Web拍手お礼】

12/8 15時
12/18 2時
拍手ありがとうございます。


深夜に目覚めた時、やたら脈飛んでるのに驚くが、日中はどうにか普通に生活して……おるが、慢性的な貧血症状に慣れてきてるがやっぱりつらい!
むしろ慣れたらだめだあれ。
どうにか最近、気持ち的な余裕がでてきたのか、週に2回ぐらいはPCに向かうようになってきました。
リハビリやと思うてちょいちょい頑張ろうと思う。
ぼんやりだらだらしつつ。
まだ絵描く気にまではならない。
でも冬休み突入すんだよねぇ……

拍手[0回]


  8★そう


 急いで帰宅して広げたお弁当はまだ温かかった。
 いつも、ただ食べて空腹を満たすだけの食事をしているけど、味わってゆっくりと食す。みるみる空になっていく弁当がもったいなくて一度手を止めた。
 食べ終わるのがもったいない、ずっと食べていたい、なんておかしな感情。
 最後の一口を口に入れ、いつもならほぼ丸のみのくせにゆっくり租借、飲み込んだ。
 弁当は当然、空になった。
 こんなおいしいものを食べてしまったら、明日から俺は何を食べればいいんだ。
 腹は八分どころか七分に満たない程度なのに、十分であった。いっぱいなのは腹ではなく心というか満足感。
 自分の為に作ってくれたご飯がこんなにも満たされるものだったなんて、初めて気付いた。母さんが居た頃は……家族のためにご飯を作ったり家事をしてくれるのが普通で、それが当たり前すぎて、全然気付かなかった。
 いつもなら弁当ガラの片づけは次に立つ時にしてひっくり返るところだが、今日は空にした弁当箱を流しへ持って行き、すぐに洗う。丁寧に洗って、ちゃんと汚れが落ちてるか入念にチェックしてから乾いたコップが放置されたままの乾燥機へ入れて電源スイッチを押す。
 乾いたらすぐに回収して明日には返せるように。父に何か言われても面倒だし……いや、あの人なら何も聞かずに弁当箱を別用途で使う気もするので。例えばちょっと水道水を飲むために器だのプラスチック密閉容器だの、水が入るのなら適当に手の届く場所にある何でも使う。あれはわりと迷惑だ。
 せっかく洗って乾燥機に入れていた水筒が朝になったらシンクに転がってるからまた洗ってからお茶を入れたり、そういえば鮭フレークの入ってた瓶もいつまで経っても水が切れなくて捨てられない。あれもコップ替わりにされてたのか。
 そう考えると父はかなり無神経でズボラだな。母さんが出ていきたくなる理由も今なら分かるかも。離婚に至った本当の理由なんて結局知らないままだけど。
 置いて行かれた身、どうにかうまくやっていかねばならない。父さんに食事代や学費など出してもらって、部活もやらせてもらってるんだから、感謝しろなんて言われたらひれ伏すしかない。まぁ、ウチの親父はそういうタイプではないけど。
 ……さっさと自立しないとな。高校卒業後はとりあえず就職だ。まだなりたいものはないけど、今は高校の三年間を全力でサッカーに捧げるのみ。



 さて、本日は中間考査初日。高校では一日二教科のテストがダラダラと四日間にもわたって行われる。中学の頃は中間五教科が一日、期末九教科で二日開催だっただけに、学校が早く終わってラッキーなような、しかし部活はないから残念なような。
 テストの出来具合は……良くも悪くもない感じではあったが、ろくにテスト勉強もしてないし、英語のリスニングはさっぱり分からず適当な回答すら書けなかった。とりあえず半分取れてたら儲けもんってぐらい。これは羽山にバレたら怒られるだろうな、黙っとこう。



 テスト最終日に待ちに待った部活解禁。テスト前の一週間、テスト開催期間の三日という部活停止期間で体力は結構落ちてるもので、走るとキツかったりするんだが、通学距離が中学時代の三倍以上なだけに、通学だけで脚力は毎日鍛えられてたようでランニングは余裕だったものの、上半身はすぐに悲鳴を上げた。腕立てとか懸垂とか全然回数がこなせない。
 グローブが手に馴染まずちょっとゴワゴワする感じがするが、そのうち慣れてくるだろう。
 ――スパーン!
 頭のすぐ横当たるスレスレぐらいでボールが飛んでくる。

「さて、インハイまでには使えるようになってもらうからな、青木」

 ひょえぇぇぇ!!!
 元フィールドプレイヤーなんだから、そんな高校から急にキーパーに転身した程度で全国レベルに達せなんて無茶な話だ。
 またリンチみたいなドッジボール的なあれが始まるのか?
 と思ったら、なぜかキャプテンに体育館へ連れて行かれた。そこでは反面を男子バレー部が練習をしていて、もう半分は男子バスケ部だ。
 もしや、強制転部? なぜに。そして、キャプテンと話を始めたのは一人の先輩バレー部員。

「ちょっとコイツにアタックっつーの? 何かこう、パーンって打ち落とすボールどんどんぶつけてやってくれないか?」

 どういうことやねん!

「で、青木は全部それ、拾って」
「はい!?」
「後ろはゴールだと思って、本気でやれ」
「ええ!?」
「キャッチしてもよし、パンチングでも何でも弾いてよし。別にバレーやれって言ってんじゃないから。じゃ、コッチはこっちで練習するから」
「ちょっとボールは柔らかいかもしれんが、本気でやらせてもらうぞ」

 バレー部の皆さんの目つきが、なぜかギラギラだ。そういえば先日の大会、一回戦惨敗ってウワサが……。
 そうだよね、これから全国に向けた練習に入るのに、育成中の次期(たぶん)キーパー程度の俺にリンチドッジなんてしてる暇なんてないですよね。

「……よ、よろしくお願いします」

 確かにボールは柔らかくてサッカーボールより軽い感じ。蹴られたり突進してくる心配はないのでひたすらボールに集中できたけど、これ練習になってるの? 実際にゴール前にいたら人は突っ込んでくるし、一人が打ちに来るわけでもない。連携、フリーの選手、チームメイトの位置、シュートコース……実際には考えるより先に反射的に動いているもので、ごちゃごちゃ考えたって仕方ない。
 けど……。

「何やってんだ、俺は……」

 ほんとに意味分からん。
 弾き飛ばしたボールを集めている途中でふと冷めたように我に返る瞬間。
 バレー部の方はばんばんボール叩き落とすだけだからさぞ楽しかったでしょう。肩で息しつつも満足げな表情でした。俺はやっぱ不満。

「今のもう一回お願いします!」

 なんて言いだすアホもいる。誰かと思えばバレー部員……あれはたぶん同級生、違うクラスの一年だ。そんなに俺がボールキャッチしたり弾いたりしてるのが楽しそうだったんだろうか。変わったヤツもいるもんだ……と思ったら、彼は腰を落とした。
 打ち落とされるボールを、床に落とさないよう、上げるだけ。決して相手コートに戻すことはなかった。
 何だ、あれ。ただ、本当にただボールを拾っているだけだ。バレーはボールを落とさず繋いで攻撃するスポーツって感じだし、どんなボールも拾っていかないといけないか……。
 よく分からないけど、そう解釈してそいつがボールを拾い続けるのを見守った。


「ありがとうございました!」


 彼は呼吸を乱しながらも、大きな声でネット向こうの先輩部員に挨拶し、頭を下げた。
 そして休憩となる。

「サッカー部も大変ですなぁ」

 さっきのアホ……休憩で体育館外に出た俺の横に腰を下ろし、話しかけてきた。

「オレ、一年三組の大本っていいます。サッカー部くんも一年だったよね?」
「ああ、俺は四組の青木」

 三組といえばアレか……伊吹と同じクラスだな。

「サッカー部のキーパー練習も大変だね。ウチの高校強豪だから普段の練習もやっぱ厳しいの?」
「想像以上だね、練習も、練習場所も」

 ここで俺の脳裏に流れた映像は、サッカー部の練習というよりは、野球部との乱闘やいがみ合い、桜井伊吹による無言の威圧。
 思わず背筋が冷たくなって身震いした。

「大本くんも大変だね。バレーってあんまよくわかんないけど、意地でもボール上げていかなきゃいけないでしょ?」
「まぁ、簡単に言うとボールを床に落としちゃダメだね。中学の時からリベロだし、とにかくボールを上げて次に繋げるのが役目だと思ってるよ」

 ……リベロ?

「サッカーにもリベロっているけど、バレーにもいるの?」
「うん。守備専門のポジションだよ。攻撃ができないとか制限もあるけど……試合中にコートの中で色違うユニフォーム着てるのがたまにいるでしょ? あれだよ」
「あー、言われてみれば居るな! あれがリベロだったんだ」

 同じポジション名でもサッカーのリベロとは全然違うんだな。こっちは守備ポジションでありながら攻撃にも参加する選手のことだし。

「サッカーといえば、オレの出身中のいっこ下にサッカーすごいって言われてるやついたなぁ」
「え? 中学どこ?」
「西中」

 にし?
 嫌な記憶が蘇る、あのMFに惨敗した……。

「んーと、なんだっけ? 去年、ハットリクン達成したとか?」
「ハットトリック」
「ええと、そんな感じ? よくわかんないけど」
「8番のミッドフィルダー、二年のトウボウソラ」

 身長はズバ抜けて大きかった印象、故に威圧感があった。
 なのに身体能力は高く、攻守に優れていた。
 自分が持たないその能力がただ羨ましく、憧れ、尊敬し、嫉妬した。
 その矛盾は未だに抱えたままだ。

「……名前まで知らないけど」

 知らんのかい。
 今年は大丈夫だけど、来年、更に成長しているであろうソイツに試合で当たったらと考えただけで嫌な気しかしない。

「でも、よく知ってるね、知り合い?」
「いや、中学最後の試合で負かされたから、よく覚えてるだけ」
「……キーパーってなんて言うんだっけ? 司令塔?」
「守護神」
「守護神、かっこいいね。じゃ、オレもバレー界の守護神目指して頑張るかな」

 テレビで見聞きした程度の知識を引っ張り出しつつ、どうにか互いの部活の話をした休憩を終えて体育館へ戻ろうと立ち上がったところ、グラウンド方面からは終始罵声が聞こえてきた。
 また今日もやっぱり……。
 そういえば、野球部は甲子園出場、そしてサッカー部もインターハイ出場が決まっているだけに、どっちも練習場所が必要なのにどちらも譲るわけがなく、また惨事になるところですね。

「外走ってるときたまに見るけど、すごい対立だよね」
「……うん、そうだね、イヤになるよ」

 何で場所確保できないのにサッカー部と野球部作っちゃったんだこの学校は。しかもどっちも強いとか意味不明すぎる。どこでそれほどの練習ができるんだよ。そのうち出場停止にならなければいいけど……。

「さ、戻ろうか。……ん? 青木くんはこのままバレー部特訓続行でいいのかな?」
「まぁ、とりあえず今はグラウンドに戻るべきではないと思う」
「……だよね」

 ということで、俺は体育館へ避難し、今度は普通にバレーボールに混ぜられたものだから、打ち方なんて見よう見まねで、ボールは突拍子もない方へ飛び、終わる頃には腕が真っ赤に腫れていた。
 ボールが柔らかいとか思って油断してた。



「今日は腕、真っ赤だね?」
「バレーやってた」
「え? 転部したの?」
「まさか。特訓だとか言われて放り込まれてただけ」

 学校帰りに弁当箱返すためにも寄った羽山の部屋があるアパート前にて、首をかしげられる。そりゃそうだ。
 忘れる前に弁当箱を返しておこう。普段はほぼ空の通学カバンを探り、それを差し出す。

「お弁当、ありがとうございました。すごいおいしかったです。弁当箱は一応洗ってあるけど」
「いえいえ、おいしく食べてもらってこちらこそありがとう。また……来週でもいいかな?」
「週に一度の楽しみになるよ」

 来週のお弁当は……乞うご期待!


  □□□


 西中、8番、ミッドフィルダー、東・方・天・空。
 ヒガシカタテンクウ?
 最初、名前の読みは分からなかった。知ったのはその西中との試合が終わって数日後。

「オレも気になってさ、クラブの西中のヤツに聞いたけど、あの8番、とうぼうそらって名前で、二年だったよ。スポ少上がりでサッカー部入って、特にどこのクラブにも所属してないみたい。去年は二、三年中心チームだったから試合には出てなかったけど、やっぱ一人デカいから目立つには目立ってたって……で、それがどうした?」
「いや、何度も抜かれてハットトリックとかふざけやがって、悔しいからスネ蹴ってやりたいって思っただけ」

 思ったことを言ってみただけ。ほんと、思い出すだけでも腹立たしい、憎々しい、羨ましい、俺も身長とセンスが欲しい! じだんだ。
 でももう、試合は終わり、引退だ。
 引退後もたまにふらっとやってくる先輩もいたけど、俺の中学サッカーはあの東方とやらに惨敗し、悔いだらけで終わった。とにかく今は次のステージ、高校サッカーのために、受験勉強に励むのみ。
 次こそはアイツに負けない強さとテクニックを習得し、とにかくアイツに勝つ! 俺は攻守に優れたリベロになる!
 再来年のインハイ予選で待ってるぜ!(勝手に)




 もう意味わからんけど、そのぐらいの意気込みだったはずだ。
 高二の春、グラウンドで伊吹に捕まってるアイツを見かけるまでは……。


 そうだ、スネ蹴ってやんねぇと。

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  7☆つばさ


 ある平日、学校が終わった帰り道。例のコンビニで特に用もないのに雑誌コーナーで表紙に気になるワードがないか見ていると、中学の同級生に久しぶりに会った。高校に入ってからは初めての再会だった。

「全国でもトップ3入りするようなかわいい制服着てるからどこの誰かと思ったら、つばさじゃない」

 斜め下に見下すような顔の角度と視線、つまらなさそうな表情、興味なさげな口調。そ
んな態度してまで話しかけてくんなよ! と初見さんなら思うような態度であるが、これが彼女のデフォルト。ツンデレさんかな? ツンツン。デレたところは見たことないような……。

「うわぁ、伊吹だー!」

 そんな態度されても、久しぶりの再会が嬉しくてついていないシッポを振ってしまう、わんわん!
 彼女の自宅は青木くんの家の近くなので意外と会いそうなものなのに、これまでに一度もなくて、偶然会えたことがなんだかとても嬉しかった。中央高校の制服を着た桜井伊吹は……シンプルな色とデザインのブレザーな分、少し大人っぽく見えるけど、相変わらずの体育会系な感じ。スカートは今どきの女子高生らしく短くしているのに、裾からスパッツがちらりと覗いている。そしてスポーツブランドのリュックに同じブランドのスニーカー……微妙に残念。これで自転車がマウンテンバイクだったりしたら、がっかりである。
 彼女は私の隣に立つと雑誌を一冊手に取り、パラパラとめくりながら、こちらを見ることなく口を開いた。

「創、最近浮かれてるけどいいの?」
「へ?」
「だから、仕留めなくていいかって話」
「ご心配なく、仕留めました!」
「なんだ、アンタだったの。危うく余計なことするところだったわ」

 何をしようとしてたのかは分からないけど、聞きたいような、聞かない方がいいような。でもこの件もようやく伊吹に報告できて一安心。

「で、どこまでいったの? セッ――」
「うわぁぁぁあああああ!!!」

 とっさに伊吹の口を左手で塞いで、パラ見していた雑誌を右手で戻してコンビニから押し出した。
 なんてことを平気で口走るんですかアナタは!!
 ホントに、この人と付き合うと疲れる……。

「冗談よ、あたしだってまだなのに、先を越されてたまるか」

 店の外。結局何も買わずに出てきてしまい、ちょっと罪悪感もありつつ、彼女が突然妙なことを口走っても困るので、更に端のフェンス側まで押して移動させた。
 なぜか私は肩で息をしている。運動不足かしら? まさか、毎日自転車で通ってるのに。

「そういう伊吹は付き合ってる人とかいるの?」
「うーん、まだ付き合ってはいないけど、野球部のキャプテンとちょっと、ね」
「やっぱ野球なんだ」
「マネやってるわ」
「へぇ」
「割と打率いいから試合出ろとか言われるわ」
「へぇ?」

 マネージャーって、なにやる係り? 試合には出ないけどバット振ってボールは打つの?

「今年の夏、甲子園出るからテレビで試合見てね」
「青木くんもインターハイ? 出るって言ってた」
「……あたし野球の話してんだけど」
「うぅ、でもスポーツはよく分からないよぅ」
「県総体は見に行ったの?」
「いや、その頃はまだ付き合ってなかったし、会場も日にちも知らなかった」
「……最近ってこと?」
「二週間ぐらいになる」

 いろんなことがあった気がするけど、まだそのぐらいしか経ってなかったんだ……。

「昨日は? 創の誕生日だったでしょ?」
「伊吹、青木くんのこと許さないくせによく見てるしよく知ってるよね」
「……付き合い長いから、ついつい視界に入るし、近所の馴染みでやっぱり気になるだけよ。っていうか、あたしの質問に質問で返すとはいい度胸ね」
「ええ、昨日、昨日ね……」

 私に対してだと中学時代によく目撃していたような襲い掛かるなんてことはしてこないけど、どうも彼女の言葉はトゲだらけ。ケガしないうちにフォロー。
 昨日はウチで、私が焼いたケーキを一緒に食べて、プレゼントを渡した、ということだけ話した。
 そうだ、青木くんが帰って間もなくお父さんが帰宅して、階段の上り口のところで会ったってメールにあったんだった。

「これから、創来るんでしょ?」
「あ、うん……」
「あたし居たらアイツいい顔しないでしょ。だから先に帰るわ。また会えるといいわね」
「じゃ、携帯番号とメアド……」
「時間がないわ、また次回ね」

 コンビニ前の交差点で信号待ちをしている青木くんの姿を見つけていた伊吹はシティサイクル型の自転車に乗り、自宅方面へと走り去った。出だしから変速は3のままで。すごい脚力。
 そして入れ違いで青木くんがやってくる。

「いま、桜井いなかった?」
「うん、居たけど帰っちゃった」
「俺どこまで嫌われてんの?」
「さぁ、実はそこまで嫌われてないと思うけど?」
「あれだけ避けられてそれはない」

 と青木くんは言うけど、伊吹は青木くんのことよく見てるみたいよ。浮かれてるって分かるぐらいに。でもきっとイヤな顔するだろうからそれは言わないでおく。
 私は再びコンビニ店内へ。ようやく飲み物をお買い上げ。今日は暖かいミルクティーにしてみた。寒くはないけど喉が渇くほど暑くもないので、冷たい飲み物を五〇〇ミリリットルはまだキツい。
 青木くんはおにぎりと冷たいお茶だ。

「昨日、ほんともう少し遅かったらと思うと恐ろしくてな」
「うん、さすがのお父さんもびっくりだと思うよ」
「こういう場合、どう挨拶すべきなんだろうな」
「娘さんとお付き合いさせていただいております?」
「それな、母親相手だともうちょっと風当り違うと思うんだけど、いきなりラスボだよ?」
「わかるそれ」

 お互いに母親不在につき、保護者イコール父親が出てくるだけに、家に行き来するとしても出会う親が父親とかハードルどれだけ高いの? って話。
 お父さんと日常会話の中で「好きな人とかいないのか?」とか言われてもなんだかイヤだし。まぁないけど。そういう部分ってやっぱ母親が担当なのかな? いないからわからないけど。

「でも、いつまでも黙ってたら付き合いづらいところもあるし、もし偶然、一緒にいる所を目撃でもされたら、とか考えてしまう」
「うん、前にもギリギリ帰宅してきたときもあったし」
「二回目じゃん、昨日で」
「遭遇するのは時間の問題か。でもやっぱりそういう話って自分から親にはしたくないよな……」
「じゃ、バレたらワタワタと弁解しよう」
「うん、その時怒られるなら怒られよう」

 男女交際、親への報告義務は一体……。なるようにしかならない、ということで。
 昨日のこともあるので、さすがにウチに呼ぶなんてことはせず、コンビニ前……というか店の裏側で少々長話をしてからその日は別れることになった。

「テスト勉強、ちゃんとしてる?」
「あー、提出物だけなー」
「ダメだよ、ちゃんとやらないと。義務教育と違って留年だってするんだから」
「まぁ……分かってはいるけどさ……」
「大丈夫よ。青木くんはやればできるタイプだから」

 手を振って、自転車を漕ぎだす。
 そう、目標さえあれば、ちゃんとそれに向かってがんばれる人だから。
 でも、サッカー続けるために入った高校――中学の頃の目標は達成した今、青木くんの次の目標は何?
 私は、変わらず看護師になること。自分にちゃんとできるのか不安はあるけど、やってみないうちから諦めない。あなたにそう自分のやり方を示したから。


  □□□


「あー、つばさんのお弁当、いつもおいしそー、いいなぁー」

 突然ですが、学校で昼食の時間です。
 なにやら『つばささん』と呼ぶと『さ』が二回で言いにくいとのことから、『つばさん』と呼ぶ友達もいる。短髪長身で中学時代はバレー部に所属していたという市外の中学校出身の志乃ちゃんだ。
 一応、食堂もある高校ではあるけど、私は少しでも節約しようと毎日前日の夕飯を少し取り置いて作ったお弁当。朝から全部作ってたらたぶんかなり手抜きになってるだろうけど、夕飯はわりと時間かけて作れるので弁当の見た目は抜群にいい、しかし前日と同じおかずを食べなければならないだけに、楽しみは半分。夕飯の段階で明日の昼食にでも食べたいものにしなくてはいけないハードルの高さ……とか言いつつ、自分が食べたいと思ったものを作っているだけ。

「つばさんちの子になりたいー。毎日おいしいもの食べたいー」
「やだな、大袈裟だよぅ。でも良かったらおかずどうぞ」
「やったー! からあげいただきまーす」

 かわりに友達のお弁当からおかずをひとつもらった。ハンバーグ、冷えてるのに柔らかい。
 みんなのお弁当のサイズも様々で、運動部に所属している子は男子か! ってぐらいの大きさだったり、足りるの? って思うぐらい小さいサイズの子もいる。私は……よくある女性用な二段弁当、少々縦長で細め。
 そういえば、青木くんは毎日、朝コンビニでお弁当買ってお昼食べてるんだっけ?
 何か不憫だな……って思っちゃダメか。作ってあげ……るのはちょっとおせっかいすぎるか。毎日弁当は買ってるだけに、材料代とか気にしてお金払ってくれそうだ。だったら週一ならいいかな? でも朝は会わないし、渡すタイミングもない。結局無理か……でも作ってあげたいなぁ、せっかく料理は得意なのに。部活もしてないから時間は……あ。

「そうか、夕飯に作ってあげたらいいんだ」

 と、うっかり声に出してしまい、何のことだと追求されまくるのであった。

「いやぁ、あのぅ、カレシさんに、お弁当作りたいなぁ、と」
「つばさんいつの間に!!」
「どこで出会ったの?」

 その後も質問攻めで。

「出会いはいずこー!」
「共学じゃないから、校内はまずないな」
「わたし、つばさんなら付き合ってもよかったのに」

 おいおい。
 まだまだ若いんですよ、女子高生ですよ。出会いなんでどこかにありますよ。それこそ突然、中学時代の同級生とか……片恋してた人とか。


 ――今日は、夕飯用のお弁当を買わないでウチに寄ってください。

 と青木くんにメールを送信し、夕飯兼お弁当作りに取り掛かる。
 昨日は鶏のから揚げで、今日の昼食弁当だったので、夕飯はハンバーグにすることにした。しかしこやつ、冷めると油が固まって白くなりおるのじゃ。それが困ってる点。作りたてならジューシーなんだけど、お弁当に入れると固い、油、白い。まだ、真冬じゃないだけましな方なんだけど。
 お弁当用の小さめのハンバーグ。明日の自分用にも作って、青木くんに渡すお弁当には多めに詰める。食べ盛りだろうから。
 肉ばかりじゃなく野菜も入れて、黄色はやっぱり卵で。定番のウインナーはちょっと手を入れてかにさんウインナー。
 何だかとても楽しい、食べてくれる人のことを考えて作るお弁当。
 ごはん、今日はとりあえず白ご飯に黒ごま、梅干しでコンビニ風。
 粗熱がとれる前に青木くんはやってきて、まだ温かいお弁当を渡した。

「さすがに毎日だと青木くんが気を遣うでしょ? だから、たまに作らせてね」

 本当は毎日でも作ってあげたいところなんだけどね、と付け足す。

「ありがとう、すっごい嬉しい」

 照れ混じりの笑顔を浮かべ、お弁当をあったかいって抱きしめてる。
 今日は長居せず青木くんは帰っていった。
 さて、明日から中間考査が始まるので勉強もしとかなければ!
 テストが終われば、また青木くんは部活が始まるから会えなくなっちゃうな……。


  □□□


 三年生が最後の試合になるかもと聞いて、友達と一緒に見に行ったサッカー部の試合、準決勝戦。
 背番号4の青木くんはゴールに近いポジションだった
 対戦相手は市内の中学校――通称『西中』と呼ばれる、最近になってサッカーが強いと言われるようになったという学校だった。
 試合時間は25分ハーフとかなんとかよくわからないんだけど、フィールドの中では選手たちが走り、ボールを追っている。

「この試合に勝ったら、県体出れるんだって」

 そこそこ詳しそうな友達がそう説明してくれる。ケンタイ? 県内の各市の代表戦らしい。それこそ文化部でスポーツに疎い私にはさっぱり分からない。
 しかし、その一勝への壁は分厚く、ずっと攻め込まれている。中でも西中8番がやたらと青木くんとぶつかっていたし、3点も奪って行った。

「ハットトリックだ……」
「はっと、りっく……ん?」

 聞きなれない専門用語。

「試合の中で一人が3点とるやつ。これは……相手が悪すぎる」

 友達が言った通り、その試合は8番を中心に攻め込まれっぱなしで、結局1点も取れずに一時間ぐらいの試合は終了した。
 中学最後の試合……県体への夢は絶たれ、三年は引退する。
 試合終了を知らせるホイッスルと同時に崩れた選手たちの姿は、見ていて辛かった。

 せっかく、高校でもサッカーやるって勉強頑張ってたのに、サッカーがイヤになったりしないかな?

 心配無用だった。

「それとこれとは話が別。勝つチームがあれば負けるチームもあるし、負けたらまた頑張ろうって思うし……まぁ、次は高校だな」

 とても前向きで、安心した。
 負けたからって諦めてたら、いつまでも成長できないもんね。
 彼はずっと、成長し続けている。あの日から、目まぐるしく。


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前回ブログ作業した次の日も作業しようと思ってたはずなのになんだこれは!
一度も投稿せずに11月が終わってるじゃないか!
まぁこのぐらい、いつもの椿瀬クオリティw
目指せ! とりあえずリハビリがてら月一投稿!
とか1月に書いてたような気がするんだけど……12月でした。

【Web拍手お礼】
11/25 9時
12/1 12時
拍手ぽちっとありがとうございます。

相変わらずの貧血で調子わりぃけど、今月は懇談会ラッシュ……
階段上がるのに足に酸素が回らなくなって動けなくなりそうだな。
今日は4階まで上がらねば。
途中でぶっ倒れてたどり着けないか……
時間に余裕もってのんびり上がろう。
生きて帰れよ(え?

拍手[0回]


  6★そう


 いろんなものに失望して、やる気も出ないのにとりあえず部活へ向かおうと自転車にまたがると、桜井家の玄関から小柄な少年が飛び出してきて、こちらに駆けてきた。
 目の前で止まり、俺を見上げてくる瞳は少し赤く、潤んでいる。

「創くん、蓮くんは? どこ行っちゃったの?」

 それは俺が聞きたいと思った。
 中二の夏休み、母と弟がいなくなって数日といったところか。
 桜井大志(さくらい たいし)、俺の弟――蓮(れん)と同じ小学五年で、家もすぐ斜め前ということもあり、小さい頃からとても仲が良かった。親友同士であっても何の知らせもなくいなくなった蓮。家族である俺でさえも何も知らされなかった。



「母さんと蓮は?」

 もう午後九時になろうとしてるのに、帰宅しない二人。何の連絡もないし、もしかしたら事故にでも遭ったのではないかと不安に思って、ダイニングでのんびりビールなんぞ飲んでいる父に聞いてみたところ、あからさまにめんどくさそうな顔をされ、ため息をひとつ。

「……ああ、もう帰ってこないよ。離婚した」

 ――は?
 意味不明だった。本当に突然だった。
 両親の間だけで話が進められていたのか……そんな予兆も感じなかったし、こんなやり方で家族がバラバラになったことのショックは、自分でも思っていた以上だった。



「ごめんね、創くん……行ってらっしゃい」

 大志を追って慌てて出てきた伊吹の母に謝られた。
 俺たち子供が知らないことを知っているのかいないのか、聞くほど興味も気力もない。部活があるから学校へ行くだけ。
 ふと、桜井家の二階から視線を感じ、見上げる。言いたいことがあるなら言いに来ればいいのに、伊吹はただ遠くからこちらを窺っているだけ。こちらからも突っかかっていこうなんて考えはなかった。
 自転車を漕ぎだす。
 水筒を忘れた。どうせお茶作ってないからいいか、水道の水で。



 伊吹との仲が悪化しても、毎年正月には桜井家でお雑煮をたっぷり食べる習慣は変わらなかった。でも、その年からは俺一人になった。
 どこへ行ったのかわからない弟が、去年はいた。本当にいたのだろうか。青木蓮――自分の中でその存在がかすんでくる。
 俺が卒業して、入れ替わりで中学に進学するはずだった。

「創くんは高校どこ受けるの?」
「一応、第一志望が中央で、滑り止めに私立二校受けるつもりです」
「中央なら伊吹と一緒か……」

 桜井家ダイニングにてお雑煮をご馳走になっているが、俺を呼びに来た大志は幸せそうな顔をしてお雑煮を食べているが、伊吹はここにはいない。たぶん自分の部屋だろう。
 そして、やはり伊吹も中央を志望していたか。甲子園に一番近い野球部のある高校を選ぶとは思っていたが、それとサッカーの強い高校がたまたま同じだなんて、どういう偏り具合だ。他校に謝れ。

「なかなかの腐れ縁で」
「ホントね。高校でもサッカーを?」
「そのつもりだけど」
「中央は野球じゃなかった?」
「サッカーも、だよ」

 アイツ、自分に都合のいい偏った情報を親に伝えてるのか? 進路説明会とかでも「野球部もサッカー部も全国大会出場経験豊富です」みたいな話は出てたはずなんだけど。

 もちで腹いっぱいになったところで……ちょうどテレビでは高校サッカーの試合をしている。中央高校の試合ではなかったが、確か次の試合だったような……もうアディショナルタイムに入るところだな。1対1で同点、どちらもいい攻めを見せるがなかなか得点に繋がらない。どちらかのチームが焦りを見せたら……。といういい所なのにテレビの電源が切れる。

「うわぁ!!」

 思わず声を上げ、辺りを見回す。誰? リモコン触ったの!
 まぁ、ここは案の定という感じで、リモコンをバンとひどくテーブルに置いてさっさとリビングを出ていくのは伊吹であった。
 これは、長居すると無事には帰れない気がするので、家に帰って試合の続きを見るとしよう。

「すみません、ご馳走様でした」

 帰宅後、桜井家で見ていた試合は終わったのか、次の試合準備のせいか、テレビCMばかりが流れていた。

 ――中央高校のディフェンス、青木が……。

 来年は無理でも再来年にはきっとテレビでそんな実況をされるに違いない!
 などとおかしな夢を抱いて、俺はひたすら受験勉強に励む。
 そして、プロに引き抜かれて、日本代表、海外移籍! 外国の有名モデルと電撃結婚! 戯言はいい加減にしろ! でかすぎる夢は現実味がなさすぎて逆に楽しくなってくる。でも妄想するだけならタダ。
 とりあえずは、サッカーだから。後のことは後で考える。


 一月に私立二校を受験、一校は合格したのでどうにか高校生になれそうだ。
 油断してはいけないのが二月。卒業式の練習も入って、覚えることだらけ。

「青木、大丈夫か?」

 誰だよ、一組の出席番号一番にしてくれたやつ、恨むよ。
 名前を一番に呼ばれ、声が裏返らないように返事して、カクカクと動いて来賓席、教員席に礼。校長に礼、階段を上がる。

「卒業証書、青木創――」

 練習なのに、練習だから良かったのか、厳かに進行していたはずなのに、ステージから降りるときに階段を踏み外してしまい、体育館内は一斉に笑い声で沸いた。
 ……もう、いやだ。
 これは本番までトラウマになる。それにこの衝撃でいくつか英単語忘れた。


  □□□


 ぼんやり……。

「おい、創、風呂入ったか?」
「……んぇ?」

 俺はまだ制服のまま、ダイニングのテレビを見ているようでそれより遠くに視線が行ってて、実は全然見ていなくて、手には箸を持ったまま、カップラーメンはもう汁がなくなるほど伸びて冷めている。もう九時だし!
 今日は俺の方が帰りが遅く、父さんは先にご飯食べて風呂に入っていた。帰宅して夕飯を食べ始めたのは確か七時半ぐらいだったはず。風呂から上がった父さんは自分の部屋に行ってしまってダイニングには俺ひとりだった。
 なのに九時? どういうことだ? すっかりぼんやりしてしまって……。
 と、ここで本日何十回目のリピート再生が始まる。市営アパートの影で……。

 ――バン!

 箸をテーブルに叩き付ける。
 いかん、いかんぞ。今思い出したら悶絶してしまうぞ。堪えろ、父がダイニングから出て部屋に戻るまでは!
 なにのんびり冷蔵庫の前で冷蔵庫あけっぱなしで麦茶飲んでるんだよ、部屋に持って行けよ!
 いやいや、俺がさっさと風呂行けばいい。制服をダイニングで脱ぎ散らかして洗面所に飛び込む。ふと鏡に映る自分と目が合うけど、なにニヤけてんだよ、気持ち悪いな! そのぐらいじわじわとニヤニヤがにじみ出ている。さ、まず冷水シャワーで頭冷やしましょうね。

 まぁ、その場の勢いというものもあります。あの場合はもう、そうしたかったというか、ね。そうせざるを得なかった。
 悲しませていたことに変わりなかった。それを埋めてあげなければと思った。
 確かに俺は部活で帰りが遅い。それをいい訳に、メールや電話で済ませていた。付き合うって、そういうのだけじゃダメだった。疎いっていうか、初めてだから、そういうの全然分かってなかった。
 俺だって逢いたくない訳じゃない。だけど、羽山だって家事をしなければならないし、親父さんも仕事が終われば帰宅する。それを気にすると、どうも部活帰りに逢いに行ってお父様に遭遇したら.……なんて考えると少々引ける。他人んちのお父さんってどうも怖い感じがするのはなぜだろう。
 さてと、明日からはできるだけ早く帰るようにして、家事の邪魔とお父さんとの遭遇はできるだけ避ける形で羽山に逢いに行かねば、だな。
 ……ホントに、中学在学中にはこういう関係になるなんて予想さえしていなかった。中学を卒業して三ヶ月ぐらい。どこで何が起こるか分からないものだな。


 そして、俺の誕生日、六月二十三日。この日は平日ではあったが、運よくテスト期間中で部活は中止だった。
 羽山の学校もちょうどテスト期間で、とは言っても彼女は部活動をしていないので帰る時間は通常通り。待ち合わせは三叉路にあるあのコンビニ――だったけど、途中で会ってしまった。これは初遭遇。

「コンビニ寄らないでウチ来てよ。あげたいものがあるんだ」

 と嬉しそうに言ってくる。プレゼントがあると察していいのか? 過剰なぬか喜びじゃないよな?
 あげたいもの?
 ま、まさか!!

『お父さん、まだ帰らないから……イイヨ』

 ちょ、まだ早すぎゃしませんか! 何も準備してない……。

 ――ただの過剰な妄想だ。

 まだ二度目のアパートの一室、羽山家。
 準備するからと羽山の自室へ通される俺。
 準備? シャワーを浴びてから的なあれ?
 よいよ、俺の準備の方ができてなくて視線きょろきょろ、心臓バクバク。
 そして間もなく開くドア。

「お待たせしましたー。コーヒーより紅茶の方がたぶん合うと思うんだー」

 羽山は制服のままだった。髪も濡れてはいない。持っていたのはトレー。ティーポットと二つのカップ、それからケーキ?

「今日はもう焼く時間ないかなーって思って、昨日焼いといたんだー」

 クリームでデコレーションされたものではなく、シンプルなプレーンのパウンドケーキだった。

「まだ日が浅いから、アレルギーや好きなものとか嫌いなものとか分からなかったから、プレーンだけどね。小麦粉、卵のアレルギーない?」
「うん、アレルギーはないよ、大丈夫。それに特にキライな食べ物もないと思う」

 誰だよ、よからぬ妄想をしてたヤツは、俺だ。
 しかし、まさかこのようなものが出てくるとは思いもしなかった。
 ケーキは甘いけどしつこくなくて、ついついもう一個もう一個と手が出てしまう。キリがない。それに、コーヒーより紅茶は大正解、ベストマッチだ。
 家事ができて料理がうまくて、そのうえお菓子も作れて……優しくて、一途。ほんと、俺なんかにはもったいない……けど、誰にも譲る気はない。

「って待てよ、この前の朝食に食パンと卵出てたじゃん!」
「あ、そうだ、小麦粉と卵だ!」

 アレルギーも何も……今更じゃないか。


 話をしながら、ケーキのほとんどを俺が食べてしまい、陽は傾く。
 日が長くなり始めているので、気付いたらいい時間だ。羽山はもう夕飯の支度をしなければならないだろう。

「じゃ、帰るね。今日はありがとう」
「いえいえ。あ、あとプレゼント……」

 と、学習机の引き出しから包装された箱型のものを取り出して渡してきた。

「何がいいか分からなくて、たいしたものじゃないけど……」
「ありがとう。ホントに誕生日が逆じゃなくて良かった。俺だったら何もできなかった」
「そんなことないよ。一緒にいられるだけで、私はいいから」

 抱き寄せて、キスをして、その日は別れた。
 また明日コンビニで、と約束を交わして。

 アパートの階段、出入り口にて一人の中年男性とすれ違った。
 どこかで見たことある? そんな気がして帰りながら考えていたのだが……、

「さっきの、羽山のお父さんだ!!」

 もうちょっとのんびりしてたら、羽山の父さんがもう少し帰りが早かったら、遭遇してた、完全に。今日のはニアミスか。あぶねーあぶねー、気をつけよう。まだ面と向かってお付き合いしてますなんて言えるほどの度胸はない。

 などと考えていたら、帰りに夕飯を買い忘れてしまった。
 冷蔵庫を開けても、飲みかけの麦茶、空のペットボトル(捨てろよ)、いつ買ったか謎のちくわ、消費期限が四月? 
 ここはカオスか、はたまたタイムマシンか。
 いつからそこにあるのか分からない生米研いで炊いて食べる度胸はない。
 さぁどうする? 悩む必要はない、「買いに行く」これ一択。
 このタイムマシン冷蔵庫はまた後日、片づけるとしよう、という建前で見なかったことにして、帰って早々また家を出て来た道を戻るとかもう、どういうことだ。

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記事タイトルが前回とは対照的に……

ブログ書いてるときにブラウザが「反応なし」になりやがって、書いてたことが消えました。
笑えねぇわ!!

全く更新される気配がないというのに、Web拍手ありがとうございます。

9/10 17時
9/22 4時
9/26 7時
10/2 15時
10/8 20時
10/15 5時
10/21 20時

ポチっと押してくださってるのに、何もできてなくて申し訳ないです。

ブログ書くついでに解析も見ましたが、どうもブクマからが多い気配?
せめてサイトTOPに「サイト更新する手段がないので、生存確認等はブログで」みたいなこと
を書いておきたいが……ビルダー入れることに成功した窓7はぶっ壊したし、XPは無線LANじゃないし……LANケーブルぐらいはあるけど……放置しすぎで動くかどうか……
はっきり言えば、XPまで出すのは面倒……アイツ首折れてるから面倒なんだよ(ヒンジ死亡)。
8.1も何で遅いか原因分からず、メモリ追加しようかと思ってた頃にCPUのスペックをようやく理解し、
「あ、これは遅くて当たり前だ」
と分かったのがごく最近。メモリ足す前に気付いて良かったな。
まぁ、7よりは天と地の差があるほど快適なので文句は言わないさ。
ブログ書いてる途中で反応なしになったのは許さんけどwww

7は、起動から安定まで余裕の10分コースだったような……
ぶん投げてぶっ壊したわけではなく、そんなロースペックでハピホしたのが原因で、動かなくなったまま、再起不能である。
初代XPといい、私さんはゲームでPC壊す天才ねw

もうPCでゲームだなんて、恐ろしいことはできん。

7のHDD抜くだけ抜いて、まだケース買ってないな……。

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プロフィール
HN:
椿瀬誠
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性別:
非公開
職業:
創作屋(リハビリ中)
趣味:
駄文、らくがき、ゲーム
自己紹介:
元々はヘンタイ一次創作野郎です。
絵とか文章とか書きます。
二次もどっぷりはまってしまったときにはやらかします。
なので、(自称)ハイブリッド創作野郎なのです。
しかし近年、スマホMMOにドップリしてしまって創作意欲が湧きません。
ゲームなんかやめてしまえ!

X(ついった)にはよくいますが、ゲーム専用垢になってしまいました。
@M_tsubase

言うほど呟かないSNS
【たいっつー】
@tsubase341

【Bluesky】
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サイトは、更新する手段がなくなってしまったため、放置になっております。
修正しようがない量なので、あれはなかったことにしてください。
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