かつてネット小説書いてた人のリハビリ場所
どうやら15話ぐらいまで書いてたようです。
なので上げときます。
(仮)なので、修正とかそのうちするかもだが……
どうやらタイトルはちゃんと決まってたらしい。
「Sweet Emotion」だとさ。
ふーん。
時間あきすぎると、書いた本人の反応さえも他人事のようだ。
なので上げときます。
(仮)なので、修正とかそのうちするかもだが……
どうやらタイトルはちゃんと決まってたらしい。
「Sweet Emotion」だとさ。
ふーん。
時間あきすぎると、書いた本人の反応さえも他人事のようだ。
3☆つばさ
小学校は徒歩通学。中、高校は自転車。
通学するのに一番イヤな天気は雨だった。
雨合羽を着ても手は露出したままだから濡れる。フードは風でめくれて役に立たない、顔が髪が濡れる。靴も靴下も、スネから下がじっとり濡れて気持ち悪い。
雨の日の自転車通学四十分はまさに地獄であった。クラスには雨の日だけバスの子もいたけど、そのあたり妥協したくなかった。ガンコ?
だけどひとつだけ、いいことがあることに気付いた。
県立高校でサッカー部に所属する中学時代の同級生が、雨の日は部活中止で早く帰宅するのだ。だから私が通常通りに帰路につき、道の分岐点にあるコンビニに寄ると、
「羽山びしょ濡れじゃん」
上は制服のカッターシャツなのに下は紺色の合羽のままという変な恰好で店内にいた青木くんは、首に掛けていたタオルを私の頭に乗せて乱暴に拭いてくる。
「やだやだ、髪がぐしゃぐしゃになっちゃう!」
私は青木くんから逃げて、トイレへ。鏡の前でポケットから折り畳みのヘアブラシを取り出し、髪をとかす。濡れて髪がぺしゃんこだ。
しかし、青木くんのタオルは面白いほどゴワゴワで大袈裟に言うと顔の皮が剥けそうだった。あれはお風呂で使うナイロンタオルではなかろうか、なんて思うほどに。どうやって洗ったらタオルがナイロンタオルになるのだろうか。
さて――雨で頭は見事にびしょ濡れ、それが伝って首元もびっしょりで実は寒い。さすが通学四十分コース。コンビニのエアコンの温度、低すぎ。濡れてるところからダイレクトに冷えてくる。
家に帰って熱いコーヒーでも紅茶でも淹れたらいいのに、暖かい飲み物がここで買いたくなる、コンビニマジック。店内に入ったら最後、何か買ってしまうよ。
暖かい飲み物コーナで、ペットボトルのレモンティを手に取りお会計。青木くんは、私が髪をとかしている間にいなくなってしまっていたが……店の外にいた。
「店内寒くなかった?」
と、彼も暖かいコーヒーを両手で包んでいた。
「すごい寒かったからついついレモンティを買ってしまったよ」
シールを貼ってもらっただけの暖かいペットボトルを両手で持っていた。でも肩から冷えてるせいでその暖かさにありがたみはない。
「梅雨に入って毎日雨だったらって考えるだけでイヤになるなー」
「ほんと。合羽着ても濡れるんだもん」
「バスで通うには乗り換えしなきゃならないし」
「あと早く出ないといけないからもう自転車でいいわーってなるの」
「つらいよな、雨」
「うん、雨キライ」
「でも、雨降ったらいいことある」
一瞬、ドキッとした。
もしかして、青木くんも私と同じことを考えて――
「部活が中止になるから早く帰れる」
私ったら早とちりさん。何を期待してるんだか。
「筋トレとかないの?」
「あるよ。ちょっとだけ。野球部と衝突しない程度に」
「衝突?」
青木くんが通っている県立中央高校は野球とサッカーが強く、甲子園や国立へよく出場はしている。けれど練習場所の確保がどうのこうのって中学の頃の進路説明会で言っていたような。それは、学校の場所に関係でグランドの広さがどちらか一方しかできないぐらいしかなく、休日は午前、午後で別れて全面使って練習するけど、朝練はローテーションで全面、平日放課後は半分ずつになるらしい。
「もう、相手の練習場所にボール入ったら、乱闘だよ」
「ら、らんとう!?」
「視界に入ったらにらみ合い、二、三年がな。一年はまだそんなことないけど、そのうち俺らの学年もそうなっていくのかもな」
「でも、伊吹とは相変わらずにらみ合ってるんでしょ?」
青木くんの幼馴染だという中学の同級生。彼女は彼と同じ高校へ進学した。野球部も強豪ゆえ、二人は三度同じ学校へと進学し、きっとまだ仲が悪いままであろう。
「そうだねー、根に持ちすぎなんだよアイツは」
たかだか野球のことで、とつぶやく青木くん。
でも、伊吹にはたかだか、ではなかったのだ。あそこまで執着する理由は……どうやらさんざまな野球アニメの影響らしい。幼馴染の男の子が野球やってたせいで勝手に重ねてしまったというのもあるらしいけど、野球というスポーツが好きだとも言っていた。
中学も高校でも野球部に所属しているが、試合には出られないらしく、仕方なくマネージャーというポジションにいるけど、本当は競技に参加する側になりたいみたい。
暖かいレモンティを口に含み呑みこむ。
喉元までは熱さを感じるけど、それを過ぎると体の冷えがやはり気になる。
店内も寒かったけど、外も寒い。雨は強くも弱くもなく、しとしとと降っている。
「よし、帰ろ」
とコーヒーを一気にあおって飲み干すと空き缶をゴミ箱に捨て、店内に入るのに脱いで自転車に引っ掛けていた合羽の上着を羽織る。
「あー、中が濡れてて気持ち悪い」
「分かる、それ。一度着て濡れたのを後で着ると気持ち悪いよねー」
内側まで濡れてるんだから何のための合羽なのか分からなくなるぐらいの不快感。
「羽山も早く帰って、体温めろよ。風邪ひくなよ」
「うん、ありがとう。青木くんも」
手を振って見送る。
彼がこちらに背を向けると、急に体の震えが抑えられなくなった。
ただガマンしていただけ。本当はすごく寒くて、体の底から湧き上がる震えを肩をこわばらせて抑えていただけ。一秒でも長く、青木くんといたいと思ったから、ガマンしてた。
これは本当に早く帰って温まらないと、風邪をひいてしまう。
学校は休みたくない。寝込んでしまったら家事ができない。雨の日はキライだけど、楽しみなの。
まだ中身の残っているペットボトルはキャップを閉めて自転車のカゴへ。ハンドルに引っ掛けてある合羽を着て、前を閉めればせっかく温まった手がもうびしょ濡れ。
「もういやだぁ」
どうせハンドル握って自転車漕げば手なんて濡れてしまう。そのまま自転車を自宅方向の道へ向け、漕ぎだした。
青木くんが帰る道とは別の方向。十分ほど走れば、古びた市営アパートにたどり着く。
先週の天気が良かった日曜にこたつ布団干して片づけて、ちょうど灯油が切れたこともあってストーブもなおしてしまった。
こんなことなら、灯油もう一缶分買うべきだった?
少々大丈夫だろうって考えが甘かった?
寒い……まだ毛布なおしてなくて良かった。
濡れた制服はハンガーにかけて、厚手の服を着こんでモコモコになって布団に潜り込んでみたけど、通学四十分で芯まで冷えた体はなかなか温まってこない。これだけ冷えてると眠気もこない。
でもいつまでもここで布団にくるまってるわけにもいかない。
「夕食、作らなきゃ……」
お米研いで、水つめたい、指先が痛い。
鍋を掛けるコンロ前は暖かい。
うーむ、どうも鼻かぜかな。鼻水が出るよ。このぐらいならご飯ちゃんと食べて、風邪薬飲んで、暖かくして寝たら治る。この程度の風邪ならたまにある。
「えらい厚着だな」
会社から帰宅した父にそんなことを言われる。
「だって、寒いんだもん」
風邪っぽいことはあえて言わないでおく。心配はかけたくないから。
「そうか……急なんだが、明日から東京に出張になって、帰るのが日曜になりそうなんだ」
「うん、わかった。大丈夫だよ。朝早いの?」
「ああ、朝いちばんの新幹線だ」
これは五時……四時起きになるかな?
今日は木曜なので、出張は金曜、土曜、日曜……土日まで出張してまで働くなんて、ご苦労なことです。
おばあちゃんがいた頃もたまに出張で数日家を空けることがあったけど、おばあちゃんがいなくなって、私が中学を卒業するまでの間は泊りがけの出張はなくなり、高校へ進学した最近から月に一回あるかないか程度でまた出張が始まって、今回で二回目だった。
その日はいつもより早めに家事を済ませ、就寝。だけど起きた頃にはもうお父さんは家を出た後だった。
……しまった、目覚ましの時間変えるの忘れてた。
そして私はいつも通り、自分の弁当を作り、学校の準備をして、いつもの時間よりは少し早く出る。
今日も雨だった。強くもなく、弱くもなく、ただ降っている雨。
イヤになっちゃうな……とため息を漏らしつつ、合羽を着て自転車で走り出すいつもの通学路。
そういえば、風邪治ったみたい。やっぱり早めの対策が大事よねー。
あー、濡れてきたー。
足が……、靴下が……、靴が……。
学校に到着した頃にはどうでもいい恰好。
女子高ゆえ女子しかおらず、男子前ではいい子でいるタイプの子は、女子しかいないこの教室では、もうひどい有様である。
そんな私も来るだけで疲れてしまい、首元が濡れたブラウスはさっさと脱ぎ、上は体操服とジャージ、スカートは穿いたままでハーフパンツ、裸足スリッパという花の女子高とは思えない格好であった。だって、寒いんだもの。
やっぱり早めの対策が大事よねー。
今日はいつもの倍、タオルを持ってきたので、首に巻いてマフラー替わりにもなるし、ひざ掛けにもなる。
でも、やけに冷えるなぁ……。
濡れた服は学校にきてすぐに着替えたし、さすがにこの時期はまだ教室にエアコンは入ってない。
やはり裸足である足が悪いのか、と気付いてすっかり乾いた足に持ってきていた靴下を穿く。
うん、あったかい? さっきよりまし。
「今日は寒いねー」
なんて友達に言うと、
「そう? じめっとするけど快適よ?」
と返され、これはもしやと自分を疑う。
やはり治っていなかったか、風邪。治ったようなふりして、潜伏しておったな!!
幸い、寒気を感じる以外はまだ症状らしいものはない。
今日は金曜日、寝込むなら明日。学校は休みだしお父さんも出張。全然オッケー。よくないけど。よし、この程度ならも乗り切ってどうにかなる。
そのはずであった。
ふー、顔が熱くなってきたー。
顔というか頭の上半分がカッカしてる感じ。なのに相変わらず肩を中心に体は寒さを感じる。
あれから、寒いと訴えてたら友達がどんどんジャージを貸してくれて、五枚着て、三枚ひざ掛けになっているという妙な状態であるにも関わらず、温まる気配がない。
よほど通気性のいいジャージなのだろうか。
さっきからどうでもいいことしか考えてない。授業も結局、右から左に抜けて行った。その分、家でやらなくてはならなくなる。悪循環。
もうすぐ午後の授業も終わる。帰って、ゆっくり寝よう。
そのつもりであった。
あれー? 家ってこんなに遠かったかなぁ。
「ホントに大丈夫? フラフラしてるよ」
帰りが途中まで一緒のクラスメイトが心配して後ろを走ってくれている。
「まだどうにか……でも、大丈夫じゃなくても、帰らないと」
今日は出張でお父さんがいない。身内も身寄りも、近くには住んでいない。こういうときに頼れる人は……アパートのお隣さんまで、さすがに巻き込みたくない。
「意地でも帰る!」
「でも、ホントに途中でどうにもならなくなったら、電話してよ」
「うん、ありがとう」
と、ここで分かれ道。いよいよ私は一人での帰宅となる。友達の前では意地張ってたけど、本当はけっこう息も上がっていた。普段ならなんともない道なのに、きつい向かい風が吹いているわけでもないのに。雨粒が、ほてった顔にはちょうどいいぐらいに、もうおかしい、重症だ。
もうすぐコンビニにたどり着く。あそこで少し休もう。そしたら、家まであと十分だから……。暖かい飲み物買って、野菜ジュース買って、おにぎり買って、栄養ドリンクをぐいいーっと一気に飲んで、元気いっぱい! さぁ、帰るぞー!
って、脳内ではできるつもりでコンビニにたどり着いたのだが、自転車を降りるとそれを支える手が震え、もう限界だと気づく。
このまま、家に帰れず死んじゃうかも……。
志半ばで、息絶える。散っていった戦国武将は、こんな気持ちであったでござるか……。
自転車が倒れる。
膝をつき、濡れた地面に手をつく。
濡れて気持ち悪いとは思わなかった。
肩で息をしてる、涙が出てきた。
我が生涯は悔いだらけでした――。
次、目覚めたら、棺桶の中だ……。
目覚めないか。
「おい、大丈夫か?」
我に返る、どうにか、ぼんやりと。
青木くんだ、何でいるんだろう?
……そうか、コンビニだからか。
ここでようやく、青木くんに腕掴まれて揺さぶられたことに気付く。
「に゛ゃー!!」
飛び上がるように立ち上がる。くつろいでいたところを脅かされて飛び上がった猫のように。心拍数上がったー。息はまだ肩でしてる。
「突然こんなとこで自転車こかして崩れたからどうしたかと……」
「いやはや、うっかり絶命するかと思いました。呼び戻してくれてありがとう」
と、できる限りの笑顔を向ける。昨日の帰りに風邪ひくなよみたいなこと言われた手前、風邪ひきましたとは言いづらい。
「顔真っ赤なんだけど」
「いやぁ、がっつがっつ漕いできたからね、自転車」
「それでフラフラなの?」
「そうそう」
青木くんは倒れたままの私の自転車を立てて、落ちてるカバンをカゴに入れてくれる。
「ウソが下手すぎるよ、羽山は」
と、青木くんは一度店内に入るとすぐに出てきて、自分の自転車に引っ掛けてある合羽の上を羽織り、ファスナーを上げながらまたこっちへ来る。
「風邪で具合悪いなら学校休む!」
「いや、朝はなんともなかったような……」
「じゃ、せめて自転車置いて、バスで帰れ!」
「……それは思いつかなかった」
どんなアホの子ですか私は。
でも、何で意地でも自転車で帰ろうとしか思わなかったんだろう?
……無意識に、ここには青木くんがいることをわかって、意地でも自転車で帰りたかった?
よく、分からない。自分のことなのに。
「ほら、早く後ろ乗る」
「でも青木くん、自転車……」
「あとで取りにくればいいだけだろ」
青木くんはなぜか私の自転車にまたがってて、私に後ろへ乗れと。
さすが運動部所属の男子。私を後ろに乗せていながらペダルを力強く漕いで、十分もたたないうちにアパートに到着した。
たかだか二階のはずなんだけど、階段がこんなにきついとは思わなかった。
どうも人前では大丈夫そうに装おうとしてる。自分の家はもうすぐ、と気が緩み始めてる。
カバンを持ってくれて、付き添ってくれる青木くん。玄関でそのまま帰してしまえば、私の緊張の糸は切れ、その場に倒れるかもしれない。もう、倒れてもいい、倒れたい。本音。
しかし、そのまま帰すだなんてひどい話だ。せめて熱いお茶の一杯ぐらい出してあげたい。想い。
だけど、限界。これ以上、装うことなんて無理。
どうにかドアのカギは開けた。
「青木くん、ありがとう。もう、大丈夫、だから……」
息絶え絶え。どうにかここで帰ってもらおうと言ったけど、
「全然大丈夫じゃなさそうなんだけど」
と、雨合羽を脱ぎ始め、私が着たままの合羽も脱がしてくれる。
「着たまま入って、部屋濡れたら誰が拭くの?」
「……私、でしょ?」
「風邪が治る頃には乾いてるよ」
濡れた雨合羽はいつものように階段の、電気メーターとかある鉄扉のところにハンガーで掛けて。
濡れた靴下は上がる前に脱いだ。壁に手をつかないと倒れそうだったけど。
自分の部屋にようやくたどり着き、ベッドにばたりと倒れた。
もうダメ。今日ほど帰宅が苦痛だと思ったことはない。幸い明日は休み……。
「服、脱いで」
「え!?」
覚醒。
一瞬にして呼び戻される、体起こす。
「まさか、濡れた制服のまま寝るつもり? さすがに風呂で温まれってわけにはいかないだろ」
と、私の部屋を見回すあなたはいつまでここにいるつもり?
「き、着替えるから部屋から出てよ!」
追い出す。
もう、何で顔熱いのかわかんないよ……。
暖かそうな服を探して……湿って肌にはりつくブラウスを脱いで、スカートを脱いで部屋の隅にぐしゃぐしゃのままほったらかす。明日、洗濯する予定で。足も肩もすっり冷えて冷たくなっている。そこに服を二枚、三枚と重ね着してもすぐに温まってくるはずはない。
そうだ、青木くんに何か飲み物でも出さないと。わざわざ送ってくれたのに……。
体のだるさを感じながら、自分の部屋を出るとすぐにダイニングキッチンになり、そこに青木くんは立っていた。
「ごめんね、いまお茶を……」
「俺のことはいいから、もう横になっとけよ」
しゅん。
「じゃ、薬飲む」
もう、帰っちゃうよね、青木くん。
何でだろう、こういう状態だからかな、人恋しいのは。普段は全然平気なのに、今日の私……弱い。
暖かい服を着てるはずなのに、靴下まで穿いてるのに、布団に入ってても震えが止まらないぐらいの寒気、これは悪寒かな。
「暖房器具ないの?」
「先週なおしたばかり」
「もう風呂しかないか」
「それ、明日入院にならない?」
「ああ、賭けだね」
なぜかまだ他愛ない話をしていた、けどなぜかここで黙り込んでしまう。
話題は見つからない。寒くて眠れそうにはないし、青木くんが帰るなら鍵を締めないと……。
「お父さん、何時に帰ってくる?」
「日曜って言ってた」
「今日どころか明日も一人!?」
「そうだね~」
「そうだねーじゃないだろう。ご飯は?」
「自分でどうにかするよー」
「どうにもならんだろうが」
「そんなことないもん、でも……今日は何でこんなに寒いの? 雪降るの?」
「降るわけあるか! 六月だぞ。カエルが鳴いても雪は降らん」
再び沈黙。
寒いけど、目を閉じてたらそのうち眠れるかな……。
「……そんなに寒い?」
「……うん、寒いよ」
「ホントに?」
さっきから寒いってずっと言ってるのに、何でそればっかり聞いてくるの?
「先に謝っとく」
「……何を?」
「ごめん」
意味も分からないまま、それは起きた。
風邪のせいでのんびり処理の頭ではすぐに理解できない。
この状況は……?
「何が寒いんだよ、すごい熱い」
「……寒いもん」
で、……なぜこうなった!!
なぜ私の布団に入った!!
あたた、あたたため、あたたたたた!?
年頃男女がおふとぅんで温め合うのは、凍えそうな冬の日って少女マンガでは鉄板でしょう!
朝チュンの方ではなくて、あわわわーん。
やだやだやだ、近い、近すぎる。
それでなくても熱い顔が更に熱くなる。寒かったはずなのに緊張とかなんとかかんとか乙女心とかで今度は血が沸騰しているかのように熱くなってくる。
しっかりと背に、手は回されている。
「まだ寒い?」
すごい近くで聞こえる声。
とても声が出せず、頭を横に振る。
「何でこういうことするかな」
声が、震える。
「だから先に謝っただろ」
違う。そういう言葉を聞きたい訳じゃない。
ううん、自分にとって都合のいい言葉を聞きたいだけなのになぜか勝手に期待してる。
だけどもしかしたら。
――そんなはずは、ない。
優しくしないで、期待してしまう。
都合のいいあなたを作ってしまうから。
涙が伝う。
本当に泣き出してしまいそうで、肩が震え……。
「泣いてるの? そんなにイヤだった? ごめんね」
違う……違う。
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椿瀬誠
HP:
性別:
非公開
職業:
創作屋(リハビリ中)
趣味:
駄文、らくがき、ゲーム
自己紹介:
元々はヘンタイ一次創作野郎です。
絵とか文章とか書きます。
二次もどっぷりはまってしまったときにはやらかします。
なので、(自称)ハイブリッド創作野郎なのです。
しかし近年、スマホMMOにドップリしてしまって創作意欲が湧きません。
ゲームなんかやめてしまえ!
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